文章の独白っぽさの規定因

文章の文体によって独白っぽさが感じられることがあることが経験的に知られている。
その規定因として以下のものが考えられる。
・テンスの意味が現在又は未来(非過去)の時を表わす(タ形と対立する)基本形の多用*1
・強調したいところと文章の区切りで行間を空けたり改行する。ケータイ小説風の行間の空け方や改行のしかたが代表的。*2
・無待遇な表現を用い、終助詞「よ」「ね」の使用を避ける。*3
・終助詞のかわりに三点リーダや「。。。」を用いたり*4、体言止めを用いる。
残された課題として、これらの規定因がどの程度独白っぽさに影響を与えるかを明らかにすること、これらが独白っぽさの規定因であることを説明したり独白っぽさにどの程度の影響があるかを予測する理論を提案することがあげられる。
独白っぽさの強い小説に、竹宮ゆゆこ、ヴァージニアウルフの小説、太宰治「女生徒」、一部のケータイ小説などがある。

*1:工藤真由美1995『アスペクト・テンス体系とテクスト』参照

*2:ケータイ小説風の一例を示すものとして、http://s.maho.jp/book/72d53dj7d523b20c/5358929008/

*3:滝浦真人2014「話し言葉と書き言葉の語用論」『話し言葉と書き言葉の接点』ひつじ書房 に依拠すれば理論的には、こういった表現は発話の受け手を意識した共在マーカーであり、独白っぽさを弱くするからだと考えられる

*4:野田春美2014「疑似独話と読み手意識」『話し言葉と書き言葉の接点』